糸島まごころ葬儀羅漢の竹島です。
ヘミングウェイの小説ではなく、谷村新司の歌に『陽はまた昇る』というのがあります。
(アリス時代からファンだった私は、谷村さんの訃報に接した時はショックを受けました)
その一番の歌詞の最後に、
冬晴れの空 流れる煙 風は北風 というフレーズあります。
そのくだりを聴くと、私はきまって火葬場の煙突から流れる煙の情景がうかび、
父を見送った日を思い出します。その頃の火葬場にはまだ煙突がありました。
当時、火葬炉の点火は遺族に委ねられ、母に代わって長男の私が、それに立ち会わされました。
そして、自分の意思ではどうすることもできない涙を知ったのは、この時でした。
あれから五十年近くの時が流れました。
父は特に私に対して厳しくありましたが、休日には私たち兄弟を、近所の子供たちも引き連れて、磯遊びに連れていくような優しいところもありました。
私が反抗期の頃、拗ねて一度だけ家出したことがありました。夜、近くの防波堤でふて寝していると、父が私を捜しに来てくれました。
「風邪ひくぞ」とだけ父は言って、私の肩に手をまわし、家路をたどりました。気まずくもあり、
うれしい気持もありました。今となっては何で拗ねたのかは思い出せません。
いつか二人で酒を酌みかわすのが共通の夢でした。果たせぬまま父は逝ってしまいました。
夢をけずりながら 年老いてゆくことに
気がついた時 はじめて気づく空の青さに
あの人に教えられた
無言のやさしさに
今さらながら涙こぼれて
酔いつぶれたそんな夜
陽はまた昇るどんな人の心にも
あ〜生きてるとは燃えながら暮らすこと
冬晴れの空 流れる煙 風は北風
(作詞・作曲 谷村新司)